| マグネタイトの抗血栓性の研究
Ⅰ 研究概要
1)研究背景
マグネタイト(Fe3O4)は身の回りのいろいろなものに使われている磁性体であるが、この素材が血液と接触しても予想外に血液が固まらないこと(抗血栓性)を発見した。それ以降、その抗血栓性がどの程度のものであるのか、またその仕組みがどうなっているのか、検討してきた。
2)マグネタイトとは?
鉄の酸化物の一種で、いわゆる黒サビである。鉄が完全に酸化されると、日常よく見かける赤サビ(Fe2O3)となるが、この酸化過程を制御することによって、実験室レベルでも容易にマグネタイトを作ることができる。
3)マグネタイト被覆方法
・マグネタイトでプラスティックのような材料表面を被覆する方法(図1~2)を示す。
Ⅱ 成果の一例
1)抗血栓性の評価方法
液体の微細な粘度変化を正確に計測できる減衰振動型レオメータ(図4;元理化学研究所 貝原 真先生の開発)を用いてマグネタイトの抗血栓性を評価した。
2)結果
SPUで作製したチューブの内面をマグネタイトで被覆したものと、被覆していないSPUチューブ内に同じ血液を入れ、同時に2台の減衰振動型レオメータで計測した。マグネタイト被覆チューブ内の血液が固まり始める時間が遅いことが判った(図5)。
Ⅲ その他の成果の要約と今後の方針
・マグネタイト抗血栓性の仕組み
・第XII凝固因子を活性化しない:内因系凝固過程を活性化しない
・血小板を活性化しにくい
・血漿タンパク質を全般的に吸着しにくい
・フィブリノーゲン、γグロブリン、ファイブロネクチンなどが吸着しにくい
・血小板活性化の起点となる血漿タンパク質が吸着しにくいことが抗血栓性の仕組みと
考えられる
・以上のように、抗血栓性の仕組みはある程度解明できたので、現在はその応用について
検討している。